2022年8月10日 — Bill Watkins
景気低迷や物価上昇の影響を受け、消費者心理は急激に落ち込んでいます。この状況下でも好調なチャネル、または収益が増加している効率的なチャネルを見つけることが急務となっています。また、市場が縮小している今、利用しているチャネルが実際に成果を上げているかを見極めることがより一層重要になってきます。
このような場合、広告主やマーケターはラストクリック、つまりローワーファネルの ROAS の改善を急ぐ傾向があります。しかし、 Neustar と EC 企業の Fospha が行った最新の調査では、これは大きな誤りであることが示唆されています。ラストクリックだけに注力すると、貴重なマーケティング費用に無駄が出る可能性があります。そうではなく、広告効果を正しく計測することに重点を置くことが重要です。そうすることで、実際には何が需要を生み出し、総収益を向上させているのかを認識できるようになります。また、コンバージョンまでに時間がかかる顧客ほど購入金額も高い傾向にあるため、こうした顧客を計測の対象に含めることで費用対効果も高まります。
Google Analytics などのメジャーなツールに依存していると、正確に ROAS を計測することが難しくなります。実態を反映しておらず、ローワーファネルが常にコンバージョンを獲得している結果となります。それは、ファネルの他の段階でどれほど多くのコンバージョンを獲得しているかを考慮しないためです。EC 企業の Fospha は最新のレポート(Pinterest の委託でない)で、世界のクライアントのデータを匿名化し、クリック数とビュースルー数を検証したところ意外な結果が判明しました。調査対象ブランドの中で投資水準が低いにもかかわらず、 Pinterest のようなチャレンジャーブランドのパフォーマンスが際立つ結果となりました。
出典:Fospha 社、eコマース広告の現況レポート(2022 年 1~3 月)
そして、このように考えているのは Fospha だけではありません。Neustar 社の最新のデータにおいても、ラストクリックを超えた分析の重要性が強調されています。Neustar は小売、エンターテイメント、金融サービス、通信、保険分野を対象に 2 年間に渡って MTA 調査を実施しました。以下の Neustar のグラフで、右側の棒グラフ(クリック数ベースアトリビューション)を左側の棒グラフ(マルチタッチアトリビューション)と比べると、最も効率的なチャネルについて、違った全体像が見えてきます。
出典:Pinterest 委託による Neustar 社のアトリビューションメタ調査。N = 22 ブランド(米国、2020 年第 1 四半期~2022 年第 1 四半期)。
オープンな姿勢で、何を買うかを決めずにチャネルに接触した顧客は、購入量が多く、購入金額も高い傾向にあります。そのため、アッパーファネルに注目することで平均注文金額(AOV)が高まります。これも Fospha データで証明されています。
出典:Fospha 社、eコマース広告の現況レポート(2022 年 1~3 月)
このグラフについて Fospha は、「Pinterest は、ショッピングのアイデア探しで知られるプラットフォームであり、そこから獲得した顧客の購入金額が他と比べ少し高いのも納得がいく」と述べています1。Neustar の調査もこのデータを裏付けるものです。Pinterest でコンバージョンした顧客の 91% が、ミドルファネルで広告を見ていました2。そして、購入金額が高かったのです。Pinterest ユーザーは非ユーザーと比べて、毎月の購入金額が 80% 高く、購入量も 40% 多くなっています3。
では、こうしたコンバージョンが成果に表れないのはなぜでしょう。それは、コンバージョンまでの時間が長いからです。購入金額の高い Pinterest ユーザーは他のプラットフォームユーザーに比べて、購入までに 1 週間かかる傾向が非常に高くなっています3。実際に、Pinterest でのコンバージョンの 4 分の 3 が広告に接触した 1 週間以上後に発生しています4。
クリック数のみを 1/0/0 で計測(クリック:1 日、エンゲージメント:0 日、ビュー:0 日で計測)している時、ビューが考慮されていません。すると、コンバージョンまでの時間が長く購入金額が高いユーザーを取りこぼしていることになります。例えば、Neustar 調査によると、ラストタッチまたはラストクリックのみを計測したキャンペーンの場合、Pinterest に帰属する合計コンバージョン数のおよそ 4 分の 1 しか測ることができませんでした2。
しかし、ビューを 1 日追加するだけでは十分ではありません。時間がかかるコンバージョンを計測するためには、アトリビューションウィンドウを広げることも重要です。例えば、アトリビューションウィンドウを 1/1/1(クリック:1 日、エンゲージメント:1 日、ビュー:1 日)とした場合、購入までに1 週間かかるショッピングユーザーを取りこぼしてしまうため、 ROAS を高めることができなくなります。購入までに 1 週間以上かけたユーザーは、ひと月におよそ 50% 多く支出するという結果も出ています3。例えば、アトリビューションウィンドウを 1 日ではなく、7 日または 30 日にすることで、そのようなユーザーも計測に含めることができ、チャネル全体でコンバージョン数と ROAS の向上が見込めます。以下に示すのは、広告主が Pinterest でアトリビューションウィンドウを 1/1/1 から 7/7/7 に拡大した結果です。広告主のビジネスサイズの大小を問わず、コンバージョン率が向上しました。
出典:Pinterest 社内データ、コンバージョンに至るまでの時間の分析(グローバル、2021 年第 1 四半期~2021 年第 3 四半期)
また、コンバージョンまでの時間が長い顧客は購入金額も高い傾向にあるため、こうした顧客を計測に含めることで、マーケティングのコスト効率を最大限に高めることができます。例えば、 Neustar によると、Pinterest は増分コンバージョンと収益の両方でマーケティング費用を超える効果を発揮しています。
出典:Pinterest 委託による Neustar 社のアトリビューションメタ調査。N = 22 ブランド(米国、2020 年第 1 四半期~2022 年第 1 四半期)。
ショッピングにかける時間が長いほど、購入金額が増える傾向にありますが、その時にどんな時間を過ごすかが大事です。人はインスピレーションに満ちた環境にいるとき、何かを試したり、購入することに対して抵抗が少なくなると言われています。7 か国を対象とした Sparkler 社のグローバル調査に参加した人の 60% 以上が「インスピレーションに満ちた環境にいるときや気分が高揚しているときに、積極的に検索して何かを試したり購入したくなる」と回答しています6。Nielsen によると、Pinterest は雑誌やテレビを超えて、ひらめきを与えるチャネルのトップに選ばれています。Pinterest で刺激を受けたユーザーの購入金額が高い傾向にあるのも当然かもしれません7。
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景気低迷下において、消費者はお金の使い方に対してより一層慎重になっており、購入の決定に時間をかけるようになると考えられます。この傾向は、ブランドにとって悪い話ではありません。ただし、ラストクリックに対するこだわりをなくす必要があります。
ROAS を正確に計測するには、Pinterest アドマネージャーでアトリビューションウィンドウを長く設定しましょう。コンバージョンの 75% が 1 週間後に発生していることをお忘れなく。ウィンドウを最低の 1/1/1 に設定している場合は、7/7/7 に設定してみるのもおすすめです。試していく中で購入金額の高いユーザーに適した期間を見つけ、キャンペーンの最終 ROAS を高めることができるでしょう。
2 つの高度なソリューションを活用することで、Pinterest のパフォーマンスについてより深い知見を得られます。まず、エンハンスドマッチを有効にしているかを確認しましょう。次に、Pinterest 担当者がいる場合、Pinterest コンバージョン API の利用についてお問い合わせください。
複数のチャネルに渡って、ROAS のパフォーマンスをより正確に理解するために、計測パートナーとの連携を検討しましょう。例えば、同じブラウザ、デバイス、セッションで発生したコンバージョンのみを考慮する従来型のアクセス解析は避けた方が賢明です。当記事の Fospha と Neustar の調査が示したように、クロスプラットフォームの影響を計測できる MTA(マルチタッチアトリビューション)の採用を検討しましょう。