2023年3月13日
カリフォルニア大学バークレー校(以下「UC バークレー」)が実施した新しい研究は、「インスピレーションを探す」という行動が持つ力を示しています。毎日 Pinterest でインスピレーションを得られるコンテンツに接触した Z 世代の学生は、バーンアウト(燃え尽き症候群)やストレスといったネガティブな状態による悪影響を受けにくくなりました。大学の試験期間というストレスの多い状況においても同様の効果が見られました。
UC バークレーでは「介入」研究を実施し、特定の習慣がウェルビーイング(心身と社会的な健康)に与える影響を測定しました。この科学的な実験研究は、インスピレーションの介入により人々がポジティブな感情を保てるようになることを示すものです。このコラムでは、UC バークレーチームと協力して実施した研究の詳しい結果をご紹介します。
Pinterest は UC バークレーの Greater Good Science センターと協力して、インスピレーションとウェルビーイングの関係性を探る実験を行いました。米国の Z 世代の学生を対象に、インスピレーションに焦点を絞って介入研究を行った結果、積極的に Pinterest のコンテンツに接触すると、バーンアウト、社会的な孤立感、ストレスの上昇がもたらす影響が緩和されることが明らかになりました。さらに、日本を含む他 7 か国でも同様の結果が得られました(合計数 = 418)。つまり、精神的に困難な時期にインスピレーションを探すことで、ポジティブな感情を保つことができ、社会とのつながりを感じやすくなり、さらには睡眠時間を延ばすことさえ可能になります。
Pinterest は UC バークレーチームと協力して、インスピレーションとウェルビーイングの因果関係を検証する厳密な実験研究を計画しました。研究チームは、Pinterest の研究員(Daron Sharps 博士)1 名と UC バークレーの博士候補生 2 名から成り、主任研究員の Dacher Keltner 氏が監督と指導を行いました。すべての研究手順は、UC バークレーの Committee for the Protection of Human Subjects による監督を受けており、加えて、研究レポートで使用した測定法はすべて、学術書で根拠が示され、数百の査読済み論文で使用されているものです(例:「バーンアウト」は 2 万件以上引用されているマスラック・バーンアウト尺度を参照しています)1。
参加者は実験の初日(1 日目)と最終日(14 日目)に、Berkeley Way West の建物にある社会科学研究室で調査を受けました。参加者は無作為に 2 つのグループに分けられ、2 週間の実験の間、各グループには 2 つの条件のうちいずれかが課されました2。片方のグループは、1 日につき 10 分間 Pinterest を使用し(Pinterest 群)、もう一方は 1 日につき 10 分間オンラインのジグソーパズルをしました(対照群)。Pinterest 群の参加者には、Pinterest でインスピレーションを感じられるものを探すように指示しました。プロダクト内の体験やコンテンツに関する制限は一切なく、自発的に行うものでした。それに対して、対照群の条件は、中立的な体験になるように Pinterest の基本的な要素(例:オンライン、視覚的、興味をそそる)を含んだものとし、Pinterest が生み出す真の違いを検証できるようにしました。
注目すべき点は、最終試験に向けて準備している大学生を対象に、インスピレーションの介入効果を測ったことです。この時期は、試験に向けてストレスが高まる時期であると言えるでしょう。
参加者は主に Z 世代でした(参加者の平均年齢 = 21 歳)。また、日本を含む以下の国(日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、英国)においても、Z 世代の参加者を対象に同様のデータを収集しました3。
まず、実験期間中、最終試験日が近づくにつれて、バーンアウトと不安感に関する自己申告が増加したことがわかりました。これは、迷走神経の活性度などストレスを示す生理的反応でも見受けられました。迷走神経の活性度は、迷走神経が活性化されている度合いを指し、対象者のストレスレベルを示します。迷走神経の活性度が低下すると、感情のコントロールと注意力が低下します。試験が近づくにつれて、学生たちの迷走神経の活性度は低下しました4。
しかし、Pinterest 群に割り振られた学生は、1 日わずか 10 分間インスピレーションを探すだけで、迷走神経の活性度データに見られるような、バーンアウト、社会的な孤立感、ストレスの上昇がもたらす影響が緩和されることが明らかになりました。これは、精神的な幸福感、身体的な健康、社会とのつながり感に影響を与えました。
Pinterest でインスピレーションを与えるコンテンツに積極的に関わることで、日常のポジティブな感情に対するバーンアウトの悪影響が和らぎ、前向きな気持ちを保つことができました。すなわち、バーンアウトしているにもかかわらず、Pinterest 群(下記グラフの赤いライン)は満足感、感謝の気持ち、思いやりを持っていました。対照群(下記グラフの青いライン)では、こうした感情はバーンアウトによって低下しました5。
Pinterest でインスピレーションを与えるコンテンツに積極的に関わることで、日常のポジティブな感情に対する身体的ストレスの悪影響が和らぎ、前向きな気持ちを保つことができました。すなわち、頭痛や睡眠障害などの身体的ストレスがあるにもかかわらず、Pinterest 群(下記グラフの赤いライン)の参加者は満足感、感謝の気持ち、思いやりを持っていました。対照群(下記グラフの青いライン)では、こうした感情は身体的ストレスによって低下しました6。また、Pinterest でインスピレーションを与えるコンテンツに積極的に接触した学生は、睡眠時間が 7% 長くなっていました。
インスピレーション実験を 2 週間続けた後、Pinterest 群の学生では社会的な幸福感が上昇しましたが、対照群の学生では低下しました。Pinterest で毎日インスピレーションを得た学生(下記グラフの赤いライン)は対照群(下記グラフの青いライン)に比べて、相談できる相手がいると感じる傾向が強くなる一方、周りの人から遠ざかる傾向や、自分のコミュニティから孤立したと感じる傾向は弱まりました7。これは、対照群の学生がインスピレーションによる緩和効果を受けなかったことで、最終試験期間のストレスの高まりによって社会的な孤立感を覚えるようになったためだと考えられます。
同じ実験を Z 世代の参加者を対象に、日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、英国でも実施したところ、同様の結果が得られました。毎日インスピレーションを得ることは、日常生活においてポジティブな感情を保ち、社会的な孤立感を和らげ、さらに、行動を起こす意欲を持続させる効果もあることがわかりました。また、インスピレーションレベルの高まりにより、リラックスしやすくなることも判明しました。リラックスレベルの高まりは、Pinterest でインスピレーションを探す行動によってもたらされたもので、インターネットでパズルをした対照群では、インスピレーションとリラックスの相関関係は見られませんでした。
今回の研究結果は Pinterest にとって励みとなるもので、Pinterest が人々のウェルビーイングの向上に貢献できる可能性を示すものでした。Pinterest は、慈善活動資金の 3 分の 1 を若者のメンタルヘルスの向上に割り当てています。また、Pinterest は American Academy of Pediatrics (米国小児科学会)と提携しており、ソーシャルメディアがメンタルヘルスに与える影響を研究する US Department of Health and Human Services Center of Excellence on Social Media and Mental Wellness の活動にも参加しています。Pinterest はこのようなパートナーから常に学び続けており、プラットフォームの改善に取り組んでいます。
参加者がどのように感じたかを調査するために、以下の質問が使用されました。
今日経験したことを振り返り、あなたが感じたことや抱いた感情について考えてください。それぞれの単語について、今日あなたが抱いた感情の度合いを数字で答えてください(1 = まったく感じなかった、2 = あまり感じなかった、3 = ある程度感じた、4 = かなり感じた、5 = 大いに感じた)。
• 感謝の気持ち
• 満足感
• 誇らしさ
• 愛する気持ち
• 喜び
• 興味
• 怖れ
• 楽しさ
• 性的欲求
• 思いやり
今日行った勉強に関する次の記述について、どう思うかを答えてください(「まったくそう思わない」を 1、「非常にそう思う」を 7 として数字で答えてください)。
• 勉強のせいで、精神的に消耗した。
• 学校が終わると、意欲が尽き果てる。
• 勉強のせいで、燃え尽きたように感じる。
• 朝起きて、今日もまた一日学校だと思うと疲れを感じる。
• 勉強や授業に出席することは、本当に重荷だ。
• 入学時よりも、勉強に対する興味が弱まっている。
• 勉強に対する熱意が弱まっている。
• 自分がしている勉強がどのくらい役に立つのか、疑う気持ちが強くなってきている。
• 自分の勉強の重要性を疑っている。
• 勉強する中で問題に直面しても効率的に解決できる。
• 出席している授業に意味のある貢献をしている自信がある。
• 自分は良い学生だと思う。
• 勉強を通じて、多くの興味深い事柄を学んだ。
• 学業上の目標を達成したとき、もっと頑張ろうと思う。
• 授業中、課題を効率的にこなしている自信がある。
今日、あなたは以下の症状をどの程度感じたかを数字で答えてください(1 = まったく感じなかった、2 = あまり感じなかった、3 = ある程度感じた、4 = かなり感じた、5 = 大いに感じた)。
• 胃腸の不調
• 腰の痛み
• 首の痛み
• 腕、脚、関節の痛み
• 頭痛
• 胸の痛みや息切れ
• めまい
• 疲労感やエネルギーの低下
• 不眠
このセクションの記述には、今日あなたが思ったことや感じたことを表している場合とそうでない場合があります。それぞれの記述について、あなたが今日経験したことに最も近い回答を数字で答えてください(1 = 自分の経験とは異なる、2 = 自分の経験を少し表している、3 = 自分の経験をある程度表している、4 = 自分の経験をかなり表している、5 = 自分の経験を非常に良く表している)。
• 自分には、問題が起きたときの対処について、相談できる相手がいると感じた。
• 周りの人と関わらないようにした。(逆コード化 - ポジティブな質問をネガティブに言い換える手法)
• 自分はある種のコミュニティ(家族や友人など何らかの社会集団、学校、地元地域など)に属していると感じた。