2023年8月22日 — Antoine Le Notre
ユーザーが Pinterest で商品の購入を決めるとき、脳の中では理論と感情の両方が作用しています。Pinterest は広告効果予測プラットフォームの System1 と提携し、購入や行動を促すには感情に訴えつつ合理的な説明も行う ”バランスの取れた広告” が必要だという仮説を証明したいと考えました。
広告に溢れている現代において、消費者の注意力や関心はあらゆる方向に分散されています。広告業界では、消費者を大量の広告にさらすことに対する意識がさらに高まりつつあります。どのように広告を見せるか、どこで見てもらうかをより意識的に実行できるよう、消費者の行動に絶えず注意を払っています。過去 20 年間で、System1 CIO (最高イノベーション責任者) の Orlando Wood 氏をはじめとした研究者たちによって、広告で大きな効果をもたらすための鍵を握るのは感情であることが明らかにされてきました。しかしマーケティング担当者は、感情的な反応を引き出しながら、ブランドをアピールする広告を作成するための適切なバランスを見つけるのに依然として苦労しています。
今年のスーパーボウルの例を見てみましょう。世界トップクラスの宣伝効果を活用するため、ほとんどの広告が明らかに感情に訴える広告戦略を取っていた一方、いまだに有名タレントの人気頼みだったり、合理的なメッセージだけだったり、広告素材が実際のブランドと結びついていなかったり、という広告も見当たりました。
Pinterest は人々がインスピレーションを求めて検索をし、お気に入りの商品を発見する場所です。Pinterest を頻繁に利用するユーザーは他のソーシャルプラットフォームのユーザーに比べて支出が多い傾向にあり、データによれば、ひと月あたりの購入金額は 40% 多くなっています1。これは広告主にとって魅力的なデータと言えます。では、メッセージで実用性をアピールするのか、それとも感情に訴えるのかを検討する場合、Pinterest で効果が上がるのはどちらでしょうか。Pinterest のオーディエンスは、商品が与える感情面での利点と実用面での利点のどちらも重要に感じていると、私たちは考えます。
Pinterest は、神経科学を用いて感情を測定する広告効果予測プラットフォームの System1 と提携し、私たちの仮説について深く掘り下げました。
「注意力」について
Wood 氏は著書『Look Out』で、精神科医 Iain McGilchrist 氏から発想を得て、注意力には異なる種類があることを説明しています。説明によれば、右脳は人に周りの世界を示し、常に気を配り注意することで環境の中にいられるようにする役割を果たしています。何か気になるものを見かけたら、その情報は左脳に渡されます。左脳は意識を集中させて、その対象物を詳しく調べます。Wood 氏は、人はいつも右脳が司る「全体への注意力」を働かせて「森」を見て、それから左脳が司る「細部への注意力」を使って「木」を見ていると述べています。
調査が示すもの
それでは、合理的なメッセージや感情的なメッセージは、ブランドの想起率や、ブランドに対する好意度や購入意向を高めるのでしょうか。
この問いに対する答えを知るため、Pinterest はブランドリフトのビジュアル分析を行いました。対象は、ヨーロッパの 5つのマーケットで行われた消費財(CPG)企業 36 社のキャンペーンと広告 100 件以上です。System1 は広告の感情分析を行いました。感情に訴える広告は購入意向が 1.5 倍に高まり、ブランド好意度は 73% 向上しました3。これは興味深い結果で、感情に訴えることで「記憶にとどまりやすくなる」というのが長い間の定説でしたが、調査の結果によれば両方の分析で最も向上したのは、「購入意向」という企業の成功においてさらに重要性の高い指標だったのです。
一方で System1 は広告素材に対するユーザーの実際の感情的反応を理解するため、回答者 150 人に広告 50 件を見せるテストを行いました。System1 の「Test Your Ad」プラットフォームは、広告を見た人が抱く感情的反応を元に 1 から 5.9 までの星の値で広告の評価を行うもので、星の値は広告に長期的なブランド成長をもたらす力があるかを示しています。この評価方法は Star Rating と呼ばれます。また、System1 はブランディングの強さと感情的反応の強度を元に短期的な売上アップの可能性を予測する評価方法、Spike Rating も提供しています。
広告が平均を超えるポジティブな感情的反応を得る(System1 の Star Rating により測定)と、想起率は 20%、購入意向は 6 倍高くなることが分かりました。この 2 つは、キャンペーンの長期的効果を大幅に向上させるのに重要な指標です2。
商品広告とブランドイメージ広告の両方で、消費者が見せる感情的反応の強度について見てみると、短期的な効果の向上に重要なのは、感情の強度であることが分かりました。
平均より上の感情の強度を持つ商品広告は、購入意向が 140% 上昇しました2。
さらに、System1 は、右脳に関わる特徴を持つ広告素材がどのようにキャンペーン効果に影響するかを理解するために、広告素材を分析しました。分析によれば、右脳的な特徴(特に広告の舞台となる場所、登場人物、ストーリー展開の分かりやすさなど)を多く持ち、左脳的な特徴(強要するようなメッセージ、ぼんやりとした体の部位や商品、繰り返しの表現など)が少ない広告素材は、ブランド好意度がほぼ 2 倍に上昇していました2。
System1 の Wood 氏は、「『右脳的』な広告素材はブランドに対する信頼をもたらすと認識されています。そのため、『右脳的』な広告が Pinterest でもブランド好意度を上昇させていることには納得がいきます。ビジネス成果の向上を示す指標としてブランドへの信頼の重要性が高まっているため、広告が右脳的かどうかにも注目する必要があるのです」と述べています。
短期的な行動に影響を与えるために大切なのは、広告のスタイルと素材の両方において、消費者の感情に訴える力が強い要素を見せることです。
短期的な行動に影響を与えるために大切なのは、広告のスタイルと素材の両方において、消費者の感情に訴える力が強い要素を見せることです。
効果を上げるための広告制作とは
ここまででお分かりのとおり、ユーザージャーニーのあらゆる段階でオーディエンスにリーチするには、論理と感情の両方に訴求することが重要です。1 つのメッセージを伝える 1 つの目的を持ったキャンペーンでも十分な効果を上げられますが、広告の影響を最大に高めるために複数のキャンペーン目的を設定し、実用面と感情面のアピールをバランスよく取り入れると、Pinterest 広告での成功に役立ちます。
広告主の成功事例
パスタブランドの Barilla は、動画ベースの Pinterest キャンペーンのビューアビリティが 73% に上昇し、ピンの認知度は約 10 ポイント増加しました4。Barilla は、Barilla Collezione ラインのパスタを取り上げた、商品が中心の 4 秒のワイド動画を作成しました。
食卓を囲む時間に関する検索を対象とするキーワードターゲティングでオーディエンスの関心を捉え、ブランドを前面に打ち出した広告でメッセージを訴求した結果、感情と論理の両方に訴えることができました。アッパーファネルである認知度向上を目指したキャンペーンは、キャンペーン認知度の大幅な向上とともに、同社のウェブサイトへの質の良いトラフィックも生み出しました。
オーラルケア・ブランドの Colgate も動画ピンを活用して、ブランド認知度を向上させるとともに顧客と感情的なつながりを築き、91% もの高いビューアビリティを達成しました5。Colgate の「Smile for Good」キャンペーンは、毎日少しずつ明るい未来に貢献する同社のミッションの一環です。この感情に訴えるキャンペーンでは、前向きな気持ちになるためのキーワードを検索している Pinterest ユーザーをターゲティングしました。商品を中心に据えながら、社会的な目的を取り入れたエモーショナルなキャンペーンでした。
有名化粧品ブランドの Clarins は包括的なアプローチを取りました。複数のキャンペーン戦略を取り入れたことで、ユーザーとって関連性が保たれ、第一想起として思い浮かべてもらいやすくなりました。そして、発見の段階のみならず、購入アクションを起こす段階でもユーザーに訴求することができました。これを利用して、Clarins は美容に関心の高い 30 歳以上の女性をターゲットとしたキャンペーン戦略を立て、ビジュアルプラットフォームであるPinterest の特性を生かし、購入意欲の高いオーディエンスにアピールしました。
「
Pinterest は、ユニークなプラットフォームと言えるかもしれません。目標志向の検索(細部への注意力)が行われる一方で、表現、探求、エンターテイメント(全体への注意力)を目的とするユーザーにも利用されています。」
System1、Orlando Wood 氏
正しいやり方で見せれば、データや商品情報も同じ程度の「感情的」反応やエンゲージメントを引き出し、売上を向上させることができます。ユーザーに商品を購入するべき強い理由を与え、ユーザーがつながりを感じられるよう、関連性を強調しましょう。
見る人の気持ちを動かす感情的なメッセージは左脳に受け渡され、購入についての論理的な検討、ひいては実際の購入につなげることができます。
注意を引く + 感情に訴える = 行動につながる
ユーザーを商品の発見から意思決定へと導く正しい広告効果が上げられるよう、広告に論理と感情の両方を取り入れる必要があります。
01
オーディエンスを知る
リーチしたいオーディエンスに関連性のある広告にしましょう。コンテンツと広告素材を Pinterest ユーザーの検索キーワードと興味関心に合わせましょう。
02
モーメントが大切
クリスマスのギフトシーズンや大規模なスポーツイベントなど、共通の文化的なモーメントを取り入れると、ユーザーの記憶に残り、ポジティブな反応を引き出すことができます。キャンペーンの広告素材として幅広いシチュエーションを用意し、広告疲れを防ぎましょう。
03
ストーリーで惹き込む
ユーザーの関心を引き、長期的な効果をもたらせるように、広告の登場人物、場所、ユーモアについて考えてみましょう。消費財ブランドであれば、商品に焦点を当てた広告で、食べ物やドリンクを心から美味しそうに楽しんでいる人(できれば数人で一緒に)の様子を見せることを検討しましょう。この右脳的なアプローチにより、商品に焦点を当てた広告素材を用いて長期的な効果をもたらすことができます。